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この青空に約束を―

戯画「この青空に約束を―」 沢城凛奈(2)

お久しぶりです。
「こんにゃく」の凛奈ルート2回目です。
凛奈と航の関係で大きな役割を果たす「合わせ石」のエピソードを中心に。



夏祭り
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海己の浴衣を借りた凛奈。照れ気味。
イメージ変わっておしとやか風な凛奈に航も戸惑い。
なんか、互いに憎まれ口を叩いてしまう。

南栄生島名物の「合わせ石」の話。
深い海の底からきた女と漁師の男が結ばれ、別れる際に一つの石を二つに割って二人で分けたという伝説からきているんだとか。

茜と二人で祭りを見て回る航を見て、複雑そうな凛奈。
隆史と二人で祭りを見て回る凛奈を見て、複雑そうな航。
分かりやすい二人。

で、その空気を引きずって、凛奈と航とで二人きりになっても、何となく重い空気。
別に、そういう関係ってわけでもないのだけれど、しかしまぁ、そういう対象として意識しているのは事実なわけで。

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ビールと屋台の食べ物を分け合って、お腹も膨れ、別に喧嘩したわけではないけれど仲直りする二人。
恐らく航も同じ気持ちだろう。


凛奈がピアスを外して航に手渡す。
合わせ石の職人とも親しい航には、それが合わせ石の片割れだと分かる。

商品化されたのは三年ほど前。
夏祭りで売られるようになったのは今年から。
凛奈は一体、どこでこれを手に入れたのか。

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何か、嬉しそうに納得する凛奈。
女の子って難しいね。




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幼い頃の記憶を夢に見る。
航は誰かに、別れた二人が絶対にもう一度会える、という“いいもの”をプレゼントしていた。
それが誰なのか、航は覚えていない。

ここまでの流れだと、この子=凛奈なんだよなぁ。



凛奈と航は合わせ石の工房を訪れる。

【淳二】
「へぇ、航の彼女ねぇ…ようやく絞り込んだか。
 一時期は六人同時って噂も流れてたのに」

【凛奈】
「沢城凛奈って言います。
 今日は本当に無理言っちゃって」


出ました、丸戸シナリオの定番。
周りから彼女扱いされて否定しないというやつです。
あと「代わりに謝って身内感を漂わせる」もこのシーンでは出てきます。

で、今日の訪問の目的は、凛奈が航とデートをしたかったから、ではなくて。
凛奈の持っている合わせ石を合わせ石職人の淳二に見てもらうため。
昔、自分が作ったものに間違いない、と淳二は断定する。

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凛奈は自分の片割れが誰か知りたかったのだ。
で、それが航だったら良いなと思っている。



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思い出の人に会えるかもしれない、とはしゃぐ凛奈。
それが、なんとなく面白くない航。
凛奈は相手が航だと思っているから浮かれているし、航は自分以外の誰かだと思っているから面白くないのだろう。

【航】
「そいつに逢ったら…どうするつもりだ?」

【凛奈】
「…なんで、そんなに、知りたがるの?」


どんどん、会話が男と女っぽい感じになっている。
もしかしたら凛奈にとって真実はどうでも良いのかもしれない。

【凛奈】
「早く、たどり着いてよ~!
 こっちだって、自信あるわけじゃないんだからさぁ~!」


寮までの駆けっこについて言っているのか、或いは。
航が駆けるのは寮への道なのか、君の心に続く長い一本道なのか。
すみません、財津和夫のファンでして。




県大会出場が決まった凛奈。
どうやら、全国大会と同日開催の二線級の大会らしい。
優勝は勿論のこと、タイムも全国大会に出ている連中に劣らないぐらいの意気込みらしい。
自信を自然体で漂わせるね、この子は。


で、航は合わせ石の片割れを探している。
悪友の雅文にも話を聞くわけだけれど、何故か凛奈の名前は出さない。
「父方の遠縁」ということにしている。
複雑な男心である。

しかしまぁ、航の父方の遠縁は雅文の父方の遠縁にもなってしまうわけで、墓穴である。
「親父とは腹違いの叔父さんの愛人が叔父さんに内緒で産んだ女の子が、三番目の旦那さんとの間に授かった子」なんて、どっかのままらぶ設定を持ち出す。
じゃあ、今、その子の父親は六番目の旦那さんかな?

隆史に呼び止められる航。
凛奈の思い出の男を見つけてしまって良いのか?と問われる。
兄貴には何でもお見通しですね。

他の男に取られても良いのか?という問いに航は「想像させるな」と返す。
事実上の自白。



部活中の凛奈に弁当を届けてやる航。
二人で弁当を分け合いながら、陸上の話。
凛奈のタイムがちょっと落ちてるのが気になる様子。

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特待生として走っていた時に比べて外的なプレッシャーは減ったけれど、応援してくれる人達に応えたいという内的なプレッシャーは当時とは比べ物にならないのだという。
凛奈は優しい子なのだ。

そんな凛奈に、航は何が出来るのだろう。
航は航なりに凛奈を思ってがんばっているのだけれど。

【凛奈】
「あたしはただ…もっと手っ取り早く、
 安心させて、欲しいだけ、なのにさぁ」


凛奈が本当に求めているものは何なのか。
航には分からない。すれ違ってしまう二人。

凛奈は食欲をなくした。




幼い頃の夢、二回目。
女の子との別れに際して、合わせ石を渡すところまで。
目覚めた航は、何かを思い出したようだ。


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眠れなくなっている凛奈。


朝早くから祖父の家を訪ね、捜し物をする航。
凛奈の壮行会に間に合わせるために、急ぐ。


朝食に手を付けず、散歩だと言って寮を出る凛奈。
その様子を訝しむ奈緒子。


部屋からは見つからず、庭の納屋を探し始める航。
壮行会が始まる時間になっても、寮に戻らない。
無理して明るく振る舞う凛奈。


壮行会はお開きに。
努めて自信満々、問題なしを装っていた凛奈だが、普段の食欲がないことを奈緒子と海己には見抜かれていた。

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海己に、自分を苦しめるプレッシャーについて話す凛奈。


納屋に仕舞い込まれた、航の母親の化粧台から見つかった合わせ石。
それを持って、急いで寮へ戻る航。
凛奈を呼び出し、二人きりになる。

怒っている凛奈。
不安で、辛くて、航に一緒にいて欲しい一日だったはずなのに、航は凛奈の傍にいなかった。
凛奈の怒りはもっともだけれど、航も航で理由がある。

「思い出の男の子について話して欲しい」という航。
航の言葉から、何かを察した凛奈。

凛奈の両親が関係の清算のために集まった南栄生島。
そこで出会った、少年。

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凛奈と航の儚い記憶は、緩やかに繋がっている。
自分の合わせ石を取り出す航。

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凛奈は航がそうだという自信があったのだろう。
或いは、願望かもしれない。

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まさかの展開。
二人の合わせ石が合わない。

ぶち壊し。最低最悪の展開。もうどうしようもない。
凛奈からビンタを喰らい、サザンフィッシュで死体と化す航。



奈緒子から情報を入手した隆史に呆れられる。
最後の最後で詰めを誤ったこと。
それと、お互いが、お互いが思い出の存在だと信じて疑わなかったこと。

隆史から「二人揃って自分に都合の良い勘違いをしてるのがお似合いだ」といわれる。
確かに、そうかもしれない。
思い出を都合良く改変してしまうくらい、お互いが思い出の相手であって欲しいと願っていたんだから。



沙衣里から凛奈の様子を聞く航。
凛奈のコンディションは相変わらず最悪らしい。
加えて、航への好感度も最悪らしい。

どうにかこうにか、凛奈と電話で話すチャンスを得た航。
航が用意した「いい話」と「悪い話」

いい話。
凛奈の思い出の男の子の正体は隆史であったということ。

航は、未だに凛奈が望むのは真実だと思っている。
隆史はそれを否定するし、僕らプレイヤーから見てもそうだろう。
何とも、やきもきする展開である。

真実を聞かされ、電話口で泣き出す凛奈。
電話を切ろうとする。

だが、航はそれを許さない。
なにせ悪い話が残っているのだ。

【航】
「それでも俺、お前のこと、好きだ!」


来たよ来たよ来たよ来たよ。
その一言が欲しかったんだよ。
どうして、合わせ石が合わなかった瞬間に言えなかったんだ。
どうして、もっと前にそれが言えなかったんだ。

一言の応答もなく、電話を切られる航。



それから3日。
航は、沙衣里と凛奈が帰ってくる飛行機を出迎えにはいかない。

砂浜に寝転がる航。
ここの内心のつぶやきが良いから引用しましょう。


 凛奈の『思い出の男の子』でもなんでもない、
 ただ、半年前に初めて出会ったばかりの、俺は…

 そんな運命とか、偶然とか、全然関係なく…
 ただ、あいつと嘘まみれの出逢いをして、
 お互い、本気でムカついて、喧嘩して…

 寮のみんなのためにって大義名分で、
 あいつを振り向かせようと努力して、お互い無茶して、
 けど、お互い、絶対に負けるのが嫌で。

 二人とも勝って、そして二人とも負けて…
 だから、やっと笑顔で、見つめあうことができて、
 そしたらあいつは、そんな表情が反則的に可愛くて。

 もう駄目だ、もうあかんって…
 拗ねられたって、ムキになられたって、いじけられたって、
 全然、ムカつかなくなっちまって。

 それどころか…それどころか…
 もう、こうして三日会えないだけで、
 まるで、禁断症状みたいに、イライラして…

 今の俺は、嫌われてるって…わかってるのに。
 空気読まなくて、タイミング外しまくって、
 チャンスに守り、ピンチに攻めて、結局ダメだったのに。

 顔、合わせられないけど、顔が見たい。
 何も、言えないけれど、言葉を交わしたい。



航の前に、現れる凛奈。

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長旅で疲れているのに、空港から急いで走ってきたのだという。
しかも、満面の笑みに涙を浮かべて。

航の告白を受けて、混乱して電話を切って、急にお腹が空いて、食べたら眠くなって、翌日の夕方に目覚めて、万全の調整をして、大会当日。

全国大会のトップタイムに5秒届かなかったと悔しがる凛奈。
解放された沢木凛奈は、本来の力を発揮したのだ。
地方の誰も見向きもしない大会で全国三位を上回るタイムを叩き出したのだ。

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【凛奈】
「あたしがここまで来れたの…
 誰のおかげで、あってほしい…?」

大事なのは事実ではないのだ。
この二人について、それは一貫している。
どうあって欲しいか。
願望の方が大切なのだ。

【航】
「俺たち…都合のいい答えが欲しかっただけなんだよな…
 本当は、正しいことなんか、どうでもよかったんだよな」


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二人とも、結論に辿り着いた。
過去の真実よりも、現在の願望の方が尊いに決まっている。


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波打ち際で、キスして、転げ合う二人。
砂まみれでびしょ濡れで、笑い合う二人。

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砂浜で二人抱き合う。
ここは、二人が心を通わせたマラソンのスタート地点。

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発言がスれてた割に、案の定処女でした。
まー、そうだろーよ。



と、言うわけで、めでたく二人は結ばれました。
バカで可愛いキャラクターから、意外と繊細な面を見せたりと、表情豊かな良いキャラクターになっています。

合わせ石が合わなかった、というひねくれた展開がギャルゲ的・エロゲ的な運命重視・因縁重視に対するアンチテーゼとして効いていました。
要は「運命とか因縁とかなくたって良いじゃねえか、好きなんだから!」という話です。
丸戸史明自身がかなり過去の因縁を非常に重んじるタイプですから、ファンに対する肩透かしというか、奇襲にもなっていて、なかなか上手いなぁと感じさせられました。

あとは、凛奈と航がどのように島を離れるのか、というところになっていくんじゃないでしょうか。
この後の展開も楽しみです。

今日はここまで。

戯画「この青空に約束を―」 沢城凛奈(1)

さて、今回は沢城凛奈ルートです。

沢城凛奈
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「コミュニティに新たなメンバーが加わる」というのは、物語の基本です。
この沢城凛奈は正にそれでして、つぐみ寮に突如新たなメンバーとして加わります。
さて、彼女の存在は、つぐみ寮にどんな変化をもたらすのでしょうか?

と、言うわけで、いってみよー!!





春の朝。
起こしに来る幼馴染。
部屋に散乱する酒瓶と二日酔い。
階下の食堂で待っている仲間。
隣には、すやすやと眠る美少女。
星野航、記憶なし。

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猶予は五分。
星野航、ピンチ。

再度踏み込んでくる幼馴染。
なお、理由は茶柱。
俺の彼女と幼馴染が修羅場すぎる?

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目覚める少女。
ずれた感じに怒っている。
そして二日酔いしている。

【航】
「どう考えても俺の子じゃねえだろ!」

【???】
「あんたのじゃなかったら誰のよ!?
 自慢じゃないけど他に心当たりなんかないわよ!」


結構身持ちの堅いお嬢さんらしい。
まぁ、航と飲みまくって部屋に連れ込まれてるのはアレですが。

少し落ち着いて、少女に記憶が戻る。
そして、新たになる怒り。

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意気地なしとはこれいかに。
プレイボーイの航が手を出してないということか。

階下から上がってくる仲間たち。
慌てて逃げ出す少女。二階までなら大丈夫、と飛び降りる。



春です。始業式です。
奈緒子会長によるありがたいお言葉があり、続くホームルームで転校生の紹介。
普通、この展開だと「あ、あんたあの時の!」みたいな展開ですが、丸戸史明はここでも笑いを忘れない。

その後、今年度第一回の生徒会総会。
会長のご意向で、最初の議題は「生徒会副会長の同衾問題」について。
周りが笑っている中、一人まじめに凹む海己。



夜。
カッコつけてベランダでギターなんか弾いちゃう航の隣へやってくる海己。
海己の用事は今朝のこと。
微妙な立場の海己は、やはりあの娘が気になる模様。



翌日。

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タイミングをずらして登場する本命の方の転校生。
起き抜けかつ二日酔いで航と愉快な会話をしていた割に、ちょっと気難しそうな雰囲気。
彼女は新たにつぐみ寮へ仲間入りすることに。


凛奈入居。
寮からの景色に素直に感嘆の声を漏らす。
この辺を見ると、素直な良い奴に思えますよね。

早速、部屋を訪れる会長。
ある種の威力偵察。

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【奈緒子】
「色々聞きたいことあるんじゃない?
 なんでそんなに美人ですかとか、頭いいんでしょうねとか
 女のわたしでも嫉妬しちゃいます~とか」

【凛奈】
「悪いけど、片づけがあるから…」

【奈緒子】
「わたしが一夜を共にした男の子は、
 一体どんなコなんですか~、とか?」


相手にペースを渡さず、鮮やかに先制攻撃。
航を話題に出すと、凛奈の表情が無関心から敵意へ変わる。
敵意があるということは、関心があるということで。

しかし「航が一夜を共にした女の子は一体どんなコなんですか~?」というのが気になったのは奈緒子の方ではないのか。

【奈緒子】
「ありゃ、ど真ん中だね、航の」


偵察後の一言。
実に素敵なキャラクターだなぁ、奈緒子は。



つぐみ寮の新寮生歓迎会。
しかし、主賓は姿を現さない。

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ツンぶりを発揮する凛奈。
そういえば、この子、黒ストだ。。。

どうせ、来年には取り壊され、離れ離れになるのだから、仲良くする必要を感じない。凛奈はそう言った。
ただ、彼女の口ぶりは傷つくのが嫌だから大事なものを持たない、という傷ついた少女の悲鳴にも聞こえなくもない。

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立ち去ろうとする凛奈を呼び止める航。
航の理屈では、既に凛奈は航達の仲間になってしまっているのだ。だから、別れを惜しんで涙を流さずにはいられないほど、関わるしか道はないのだ。




何故か島の人から、干しアワビやら昆布やらスルメやらをもらう航。

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世間知らずな沙衣里に指摘されるまで気付かないとは、星野航にとって不覚であったことだろう。




夜。
今日はベランダでハーモニカな気分の航。
凛奈が帰ってくるのを見つけ、おかえりと声をかける。

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今日も取り付く島もない。
島の住民も、寮に人間も、航も、彼女を受け入れようとするのだが、彼女は受け入れられることを拒んでいる。




問題児、凛奈、三時間目からの登校。

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いつも通り、わざわざ敵意を煽るような態度で教師に接した結果、校庭10周の罰を与えられる。
航も凛奈が作為的にそうしているのが分かる。
さて、彼女を孤独へと進ませるものは何なのか。

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窓から外を見て、航は黙々と走る凛奈を見つける。
普段の態度からは想像もつかない、真面目な、ひたむきな走りぶり。

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そして、走り終え、航の視線に気付き、嫌悪を露わにする。
凛奈は見られたくなかったのだ。
無理にでもひねくれて見せている自分の真っ直ぐな部分を。
しかし、この子はジト目可愛いな。

【航】
「お前のブルマ姿を近くで見るために抜け出した」


なんて言っちゃう航もなかなかです。



頼れる兄貴分三田村隆史の店、サザンフィッシュを訪れる航。
凛奈と航が出会った時のことを聞き込み。

【航】
「俺、20歳。元ヤンだけど、まだ童貞の熱血漢なんだ」

それ、ショコラの結城大介だしww
はっ!航=大介ということは、奈緒子ルートが真のTrueエンド!?(違)

とまぁ、それはさておき。
サザンフィッシュで酔い潰れた航の隣に現れてガンガン飲み始めた凛奈は、最終的には隆史が目を離した隙に航と二人で消えていたとのこと。
こ、これが「お持ち帰り」!?

凛奈は航を気に入ってついていったはずだろう、と隆史は推測する。
では、どうして冷戦状態になっているのか。

あ、ちなみになんですが、茜が帰宅して隆史と茜が兄妹であることが判明します。
隆史が「こんな軽薄でスケベな男に近づくな!」とダブスタを発揮する辺りが、実に可愛らしい。




沙衣里が、寮生について情報収集するよう学園長と教頭に命じられた事が判明。
つぐみ寮を潰すために学園長と教頭は何やら画策しているようで、何か問題を起こしてしまうと一発で廃寮となる危険もある。
と、いう状況から鑑みるに、凛奈の存在が寮にとって最大の危険ということになる。

凛奈の父親は出水川重工の研究者で、昔から南栄生島に駐在していたらしく、長い別居生活が祟って両親は離婚。
母親と東京で暮らしていたということだが、凛奈は母親との折り合いが悪くなり、父親の元へ。

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凛奈は「一年生ながら全国大会に出場した陸上の特待生」という立場も捨てて、父のいる南栄生島へやってきたのである。

が、年頃の娘としては何とも辛いことに、父親は部下の女性と同居中。
父親としては、凛奈に理解してもらう努力をしたのだけれど、まぁ、凛奈が居場所のなさを感じてしまったのも無理のない話です。


と、いう凛奈の境遇を知った航は、彼女と更に真剣に向き合うことを決める。
「話がある」と航が言うと、凛奈も「用がある」とのこと。
不意に浴びせられる平手打ち。

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あ、この子、父親を「パパ」って呼ぶのか。かわいいな。
じゃなくて!

凛奈の父→沙衣里→教頭というルートで、凛奈と父親についての複雑な事情は広まったわけですが、凛奈は自分→航→教頭と伝わったものだと思っている。
勘違いだし、情報の流出元は沙衣里なんですが、航が凛奈の事情について聞いたのを覚えてないというのも、原因の一部なんだよなぁ。。。

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意外と泣き虫凛奈。
「もう航の顔を見たくないから出ていく!」みたいな話になってしまった。




【海己】
「こ、これ受け取ってくださいっ!」


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凛奈驚く。

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そして照れる。可愛い。
突然のラブレター?突然の百合展開?
なんてはずはなく、航の手紙を海己が取り次いだのである。


翌日。
なんか怒ってる凛奈。

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「手紙の内容に責任を持て」という部分より、前半の誤解部分が気になってしまう。
いや、まぁ、そう見えるけどさ。

突き返された手紙を査読する奈緒子。
内容は、寮生についての山盛りな暴露話。
航の国語力と、その指導をしている沙衣里の指導力は痛烈な批判に晒される。

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なんか隙を突いて可愛いこといってる会長。
海己は凛奈への手紙について、取り次ぎだけでなく内容の監修も命じられる。


翌日
航の手紙を携えて再度凛奈にアタックする海己。

【海己】
「うん、沢城さんの言う通り、
 わたしが責任持たなくちゃいけなかったよね。
 ごめんなさい」

【凛奈】
「…それって、つまり」


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自分で言っておいて、認められると複雑そうな凛奈。
勿論、海己は純粋に手紙の内容に責任を持つことについて同意を表明しているのだけれど、凛奈は「どういう立場から責任を持つのか」も気になっているわけで。

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あぁ、まぁ、つまり、そういうこと。
なんかさ、凛奈、かなり脈ありなんですよね。



凛奈への三通目の手紙をしたためる航。
段々と、航は恥ずかしくなってきているようだ。
で、海己、三回目の取り次ぎ。

【海己】
「少なくとも、わたしが貰ったら嬉しい。
 そんな手紙になってると思うんだ」




凛奈への四通目。
「校庭を走り終えた時みたいな笑顔を、凛奈が自分たちといる時も出してくれたらいいと、願ってる」なんて、臭いけど良い内容の手紙。
書いてる様子を眺める海己は、なんだか複雑そう。

その翌日、四回目の取り次ぎ。
海己はこれまでとは違って浮かない顔。

【凛奈】
「早く…渡しなさいよ」

【海己】
「…どうしても、欲しい?」

【凛奈】
【いっつも無理やり渡してたくせに】

【海己】
「き、昨日まではね?
 でも、その…」


煮え切らない様子の海己から手紙を奪い取り、去っていく凛奈。
それを複雑そうに見送る海己。

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サザンフィッシュで夕食を摂る凛奈。
雨が降り出し、寮に帰れない。
食後のコーヒーを飲みながら、隆史に自分のことを語り始める。

凛奈は、それなりに希望を抱いて南栄生島にやってきたものの、初日で全てぶち壊しになってしまった。
その夜に、出会ったのが航。

【凛奈】
「壊れただけならよかった…
 だけど、少しだけ、治りそうになった。
 それが失敗だった…」

【凛奈】
「余計…傷ついた」

【凛奈】
「それが…それがね…
 また、あたしを治そうと足掻いてる」

【凛奈】
「ほっといて欲しいなぁ…
 今さら構わないで欲しいなぁ…
 ぐらぐらすること言わないで欲しいなぁ…」


凛奈にも意地があるわけで、一度心を閉ざすと決めてしまったのに、そうそう簡単には開けないのだ。
勿論「開きたくない」と「開けない」との間には、結構な違いがあるわけだけど。

サザンフィッシュに航がやってくる。
雨の中「借りた傘を返しに来た」なんて見え見えの口実で。

「航が傘を持って迎えに来た」なら凛奈は拒んでしまうから「隆史が傘を貸す」に図式をすり替える。
そうなると凛奈は、分かっていても拒めない。

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凛奈はそもそも、人の好意を拒めるような人間ではないのだ。
それを理解したから航も、彼女の扱い方が分かってきている。

図ったように出てくる高見塚マラソンの話題。
ディフェンディングチャンピオンである航を脅かす存在が、というわざとらしい話の展開。

席を立とうとする凛奈。
挑発する航。
「もう顔も見たくない」という平手打ち事件以来、久々の口論。

高見塚マラソンで勝負して決着をつけよう、ということに。
凛奈が勝てば、航は寮を出る。
航が勝てば、凛奈は夕食を皆と一緒に食べる。




凛奈と航の勝負は、既に学園長と教頭の耳に入った模様。
彼らの思惑は、凛奈を勝たせて航を退寮させ、つぐみ寮の結束を崩すこと。

奈緒子、宮穂、静は呆れながらも航の挑戦を応援する構え。
一方、一人心配を露わにする海己。
航が寮を出て行ってしまう可能性が、万に一つでも存在するのが海己には我慢できないのだ。

海己が泣き、航が慰め、というタイミングで凛奈が現れる。
なんとなーく、航vs凛奈と共に海己vs凛奈の雰囲気。
「ベストに戻して大会を迎える」と宣言する凛奈。



大会前日、教頭に呼び出される航。
中間試験の成績が悪かったので追試を受けろ、とのこと。
なんともあからさまな、陰謀の臭い。

一方の凛奈。
大会コースをテストラン。

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ブランクを取り戻せたようで、満足気な笑み。

小さな大会でも、陸上に復帰できたこと。
全力を出して競うに足りる相手がいること。
しかも、そいつが結構気になる奴であること。
凛奈は自分の感情を認めないが、彼女は大会を心待ちにしている。


夕飯時。つぐみ寮の食堂。
航が帰らないのを心配する寮の面々。
まさか、学園側が本気の陰謀をかけてくるとは知らず。



大会当日。
スタート10分前になって、やっと現れる航。
昨夜の睡眠時間はゼロ、学園からスタート地点まで10キロを走って到着。
まさに、最悪のコンディション。

航の体調の悪さを見抜き、棄権するよう告げる凛奈。
裏表ない、ただ、航の体調を気遣っての言葉。

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凛奈は優しいんだよ、やっぱり。


そんな凛奈を、航は挑発する。

【凛奈】
「あんた、あたしと仲直りしようと
 してたんじゃないの!?」

【航】
「お前が何でも先延ばしにして逃げるからだろ!」


航は絶対に今日、決着をつけようとする。
完全な孤独を選ぶことも、クラスに溶け込むことも選べない、凛奈の中途半端な態度をぶち壊すことを宣言する。

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スタートの号砲が鳴っても睨み合う二人。
勝負のルールを確認し、スタートを切る。


一分遅れのスタート。
焦って前に出ようとする航を凛奈が押し留める。

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二位になるまで自分についてこい、と合図を送る。
やはり、凛奈は航といい勝負がしたいのだ。
どれほど意固地になっていても、感情的になっていても、それは変わらない。

中間地点で凛奈と航が先頭に立つ。
ゴール地点で待つ面々がどよめく。


走りながら、航を何度も振り返る凛奈。
航の方も、自分の状態がまずいこと、凛奈を心配させていることは自覚している。

坂を登りきり、急な下りとカーブに入る。
凛奈が振り返っても航の姿は見えない。心配されることはない。
だから、航は、安心して倒れられる。


8キロの給水ポイント。
足を止め、沙衣里に詰め寄り航の様子を聞く凛奈。

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取り返しがつかない結果を想像し、自分の態度を悔いる凛奈。

【沙衣里】
「あんたは行きなさい!
 そして一位を取りなさい!」
「そして、ゴールした後も、今の気持ちを覚えてるなら、
 ここに三つの誓いを立てなさい!」
「一つ! その賞状は寮に飾ること!
 一つ! 今夜の祝勝会には必ず参加すること!
 一つ! みんなに、今までのことを謝ること!」

カッコイイぞ、沙衣里。
沙衣里に叱咤され、決然と走りだす凛奈。


一方の航。
走れメロスパロディのおふざけが挟まって、再スタート。
どういう手段を使ったのか、ラスト50mで凛奈の前に現れる航。
そのままスパートをかけて見事一位でゴールインするも・・・。

星野航、鵯越の逆落としで大逆転はコースアウトということで、失格。
鹿は四足、馬も四足。しかし人間は二本足なんですがね。

しかし、航は大会は失格になっても凛奈には勝っているのだ。
なにせ、勝負の条件は「先にゴールに入った方の勝ち」だったのだから。

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怒る凛奈。

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泣く凛奈。

あ、ちなみに航、鵯越の逆落としの際に右腕骨折。
アルバイトを辞めたり、気になる男の子を振ったり、そういうのは必要ないみたいですが。






治療を終え、病院で一眠りをし、寮に戻ると祝勝会。

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約束通り、寮の仲間に謝る凛奈。
それをぶち破り、ビールかけを始める航。

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つぐみ寮に涙は要らない。
少なくとも、今はまだ。




深夜。寮のテラス。
航と海己。
祝勝会の後。海己は凛奈と風呂に入ったのだそうだ。
そこで、凛奈が昔、島に来たことがあるということや、海己の小さい頃の話をしたのだという。
いずれ離れるにせよ、沢城凛奈はつぐみ寮の一員になったのでした、と。







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季節は夏。
星野航、腕は回復。
そして、一ヶ月の停学明け。

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朝から仲良くバスケットボールに興じる二人。
その様子を、なんとも複雑そうに見守る海己。

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遅刻しそうな航を待つ役目を海己から奪う凛奈。
雨降って地固まり、台風の訪れを予感する沙衣里と奈緒子。

凛奈は可愛いですねぇ。
航相手には「昔っからジャンケンには弱くて」なんて言い訳する。


航が不在のうちに、凛奈はすっかりクラスに溶け込んでいたり、また、いつの間にかテストまで一週間になっていたり、と色々あったようです。
中間テストのようなことにならないように、生徒会としては寮生の試験対策を全面支援する方針。

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ちなみに、部員一名の陸上部も発足。



放課後四時間、試験勉強に拘束された航。
テラスで海己と話しているところに、凛奈登場。

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どうも、航と海己の関係に挑戦する凛奈、みたいな構図になりますよね。
海己も海己で、凛奈を他の寮生とは違って脅威だと感じてるみたいだし。

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凛奈の夜食のおにぎりを半分奪い取る航。
お礼を言われて照れる凛奈。
用意してきた夜食が渡せない海己。

海己にとっては、何事にも航と対等になれる凛奈は眩しい存在なのかもしれない。
沙衣里が自分にない落ち着きを持った奈緒子を意識し、奈緒子が自分と違ってプライドを捨てられる沙衣里を羨んだように。



奈緒子の特訓を受けるべく、重い足取りで下校する航を凛奈が呼び止める。
アップを手伝っていかないか、と誘う。

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航を陸上部に誘う凛奈。
今までは、一人で走るので十分楽しかったけれど、航と走って、誰かと走る楽しみ、競う楽しみを感じたのだという。

【凛奈】
「航には負けたくないって思ったし、
 勝ったら、やっぱり、嬉しかったし…だからさぁ…」

【航】
「先にゴールしたのは俺だ」

【凛奈】
「みんなに一位と認められたのはあたしだけどね」


とても仲良し。
ニヤニヤしますね。




夜。
奈緒子の特訓から解放されて部屋に戻る途中。
明かりがついている凛奈の部屋に立ち寄る。
案の定、居眠りをしていた凛奈。

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起こしてやると、開口一番。
この子、すれてるんだかいないんだか。
てか、もうやっちゃえば良いんじゃないか?

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居眠りにより一夜漬け失敗が確定的な凛奈。
こんなとこまで対等というか、なんというか。
ツンが抜けた凛奈は、馬鹿かわいい子になってた。



静と入浴する凛奈。
直前に尻込み。

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なんか、もう、意味わからんことになってるな。

静と凛奈のわだかまりの理由が、航には分からない。
これまで、航に一番構ってもらっていた静と、最近航に構ってもらっている凛奈、という対決の構図なわけでして。

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しかし、凛奈も見境ないな。
海己とも静とも争おうというのか。

力技で凛奈は静と打ち解ける。
それを見守る、宮穂と航。
ちなみに、のぞき。




夏休み突入。
航の成績はどうにかなったものの、凛奈と静は補習。
そういえば、凛奈の補習科目に数学が入っていなかった。
航と夜を徹して頑張った効果があったということか!

凛奈と静の遠泳対決。
1分間のハンデをぐいぐい追い上げる凛奈が、急に泳ぎを止める。
最悪の事態が頭をよぎり、航は急いで凛奈を助けに行く。

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なお、事の真相はこちら。
星野航、何の罪もないが浅瀬で犬神家状態。



大食いが増えたつぐみ寮。
おひつに残った最後の一膳分を奪い合う凛奈と航。

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自分の方が多く食べた自覚があるので、強く出られない凛奈。
可愛いけど、さ。





キリはあんま良くないんですが、この辺で。

ここまでの感想ですが、
花鳥玲愛のピークがデレるところだったのに対して、凛奈はデレた後も上手く書いてるなと思います。
馬鹿かわいい感じのままらぶ小雪系のキャラクターになるのかな。

さて、今後も楽しみにしつつ
今日はここまで!

戯画「この青空に約束を―」 六条宮穂(2)

約二ヶ月ぶりでしょうか。
お久しぶりです。
さて、宮穂ルートの続きを最後まで進めましょう。

もう忘れるくらい前ですが、前回は宮穂と航がくっつくまででした。
今日はそこから最後まで。




そういうわけで結ばれてしまった二人ですが、航はそれなりに常識のある若者なので、避妊をせずにセックスしたら何が生じるかということに無頓着ではいられません。

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そんな時にまぁ、こういう茶化され方をしたら怒るわなww
で、無事に生理は今月も来たわけです。
あからさまにホッとした様子の航に、ややご不満な宮穂。

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そういう関係になったわけだし、今後もそういうことするわけだし、今後は気をつけよう、という話をしていて、ニヤニヤしだす宮穂。


二人はそういう仲になったとはいえ、取り敢えず暫くは秘密の関係ということに。共同生活の中でくっついちゃって、大っぴらに出来ない二人、というのが丸戸は好きなのだ。

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隠してることによって、何らかトラブルが生じるというのがベタな展開ですが、取り敢えず宮穂は明るい。




夕食の風景。
凛奈は陸上の大会に出てきたらしい。

【沙衣里】
「それがさ~、もう敵なし。
 1500も3000も断トツの大会新。
 正直、わたしたちのレベルで出るとこじゃなかったわ」

【奈緒子】
「たちを付けるな幽霊顧問」


やっぱ、この二人の遣り取り、良いなぁ。
「奈緒子」と陸上って、なんかビッグコミックスピリッツで連載されてた陸上マンガを思い出すわけですが、そういえば関係あるのかな。あれも島の話でしたけど。

食卓の話題が凛奈の快挙で持ち切りの中、宮穂は航の世話焼きを海己から奪い取らんと人知れず躍起に。いや、気付かれてないと思ってるのは宮穂だけですが。


宮穂と静が入浴中、航の尋問タイム。

【沙衣里】
「それでも年上が我慢すべきでしょう!
 猿かあんたは!?」

【凛奈】
「猿だよね」

【奈緒子】
「猿に決まってんじゃない」


バッサリ。
今後の方針としては「皆にバレてしまったなら、もっと大っぴらに彼女ぶる」みたいなことを宮穂に考えさせないため、バレていることが宮穂にバレないようにする、ということに。
ちなみに宮穂は「秘密なんです」と言いつつ静にバラしてたりする。駄目だな、この子www



夏休み最終日。
自由研究を進める宮穂と航。今日の予定を済ませて、滝村執事の運転する車に乗って、で、真っ直ぐ帰るかなと思ったら六条邸へ。これも一種のおうちデート?

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なんか、宮穂がひどくやらしいお嬢様になってるな。教育の賜物ですか?

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体温測ってグラフを付け、安全日ノートを作り、二重底引き出しに隠しているらしい。この用意周到なバカさが可愛かったりしますね。


航は宮穂に嗜虐心を煽られてしまってるわけですが、この辺の表現が丸戸独特な感じしますよね。ダメ恋の理くんも、割とサドっぽくなったりしてたし。愛しい人に傷つけられたがる、愛しい人を傷つけたがる、みたいな。

あぁ、そういう意味で言うと、セックスのみならず、愛しい人を傷付けて永遠に覚えておいてもらう、みたいなのもしばしば出てきますよね。ショコラの香奈子さんがそうだったし。

航の、何かメタっぽい独白があってこの項は終わり。
読者にとっては納得できても、登場人物には納得出来ないエンディング、というような内容だったけれど、さて何を暗示しているのか。





自由研究続き。星野家の納屋をひっくり返すして、宮穂の祖父の著作を探す。
この項が「ほんのちょっとした違和感」って題名なのが、たまらなく不安ですけど、どうなんでしょうかね。

【宮穂】
「わたし、いつか戻ってきたいです。この島に」


その、いつかがいつなのだろう。今といつかの間には、航と宮穂が離れ離れになっている時間が確実に存在するわけで、それが航を不安にさせている。

身分も違うし、一回離れてしまったらもう一度同じように関われるのかってのは不安でしょうねぇ。宮穂は物事を明るく素直に信じて捉える方だから、そうは思わないのかもしれないけれど。








薬局で「薬品の類ではなくて・・・」とか「化粧品の類でもなくて・・・」とか要領を得ない注文で店員を困らせた末に、逃げ出す宮穂。

【宮穂】
「わたしっ、頑張りました。
 一人でなんとかしようと努力はしたんです!
 でも…でもっ」

【宮穂】
「わたしには限界です…
 でも、どうしても手に入れなくてはならないんです。
 お願いです先輩、わたしの代わりに…」

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【宮穂】
「避妊具買ってきてくださいっ!
 あ、お金は出しま…きゃああっ!?」


もう、分かっちゃいたけどひどいwwww
そりゃあ、航だって蹴りますよ。


狭い島の中なので、航だって頻繁にコンドームなんか買ってたら大変なわけで、自動販売機を使うことに。

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まったく、生活感溢れるお嬢様だぜ。
そして、バカなコントをしながら購入の決意を固めるも・・・

【宮穂】
「すいません!
 この1万円札、全部500円玉に
 両替していただけませんか?」

【店員】
「…今ならこっちの3箱買うと、
 1箱おまけについてくるよ?」


お後がよろしいようで。






図書館に資料を返しにいく宮穂。
滝村執事と共に、車中に残される航。
沈黙が続くこと5分。

【航&執事】
「あの…」
「星野様」


意を決して声をかけようとしたら、重なってしまう二人。
おいおい、ラブコメかww

宮穂の両親が何故、島での寮生活を許したのか尋ねる航。
そりゃまぁ、祖父祖母の思い出の地だって言っても、可愛い一人娘だし。

【執事】
「お嬢様の…
 生まれて初めての、我が侭だったからです」


滝村執事から語られる、島に来て朗らかに、生き生きと過ごすようになった宮穂の姿。最初からそうだったように思っていた航にとって、それは意外な話。

宮穂が滝村執事に話しかけるようになったのも、この島に来てからなのだとか。友達の話を良くするということで、会長について聞いてみる。

【執事】
「外面も内面も能力的には素晴らしいのですが、
 ところどころ、妙に安普請な部分があるのが、
 とても親しみやすい、という感じでしょうか?」


宮穂がどんな伝え方をしているのか想像すると笑えるけど、滝村執事の的確な要約にも笑いを禁じ得ない。


で、もうちょっと踏み込んで、航と宮穂の関係について。滝村執事は二人の関係について、間違いなく知っているが、何も咎め立てはしない。その理由は「お嬢様の“夏休み”だから」とのこと。

つまり、いつかは終わってしまうのだ。宮穂は島を離れ、そこであったことは思い出だけになってしまう。とても残酷なことを、さらりと語る滝村執事。

つまり、星野航と六条宮穂は将来を共有できない二人なのだ。







季節は秋。
文化祭での発表を目前に控え、自由研究も大詰め。
あ、そういえば星野航は生徒会長に就任したらしい。

【航】
「権力というモノは使ってナンボだということを、
 二人の人間から教わったからな」

【宮穂】
「…二人目が誰か気になるんですが」


まあ、自覚があるだけ良いということで。

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そろそろ二人の自由研究も終わりということで、改まって航に礼を言う宮穂。
しかし、何か、この言葉は航にとって複雑かもなぁ。
「まだ終わってない」ということで、航は現状の引き伸ばしを図る。

しかしまぁ、航は航で考えているようで、残りの見つかっていない資料が見つかるかどうかで賭けをすることに。

【航】
「ま、要するに、俺だけのものになれ…って意味だ」


無邪気な宮穂は気が付かないが、これは航にとって、ある種の戦いなのだ。未来の宮穂にとって、星野航を過去の存在にさせないための「味方どころか、敵もいない孤独な戦い」なのだ。





文化祭当日。
昨年は大暴れを見せた航ですが、今年は生徒会長なので仕切る側。
奈緒子と海己に勧められるものの宮穂の展示に顔を出そうとしない。
その理由はまぁ、前項で始まった孤独な戦いに航が敗北したからで。

外ではキャンプファイアーが始まった頃に、漸く顔を出す航。
皆のところではなく、ここで二人で踊ることを提案する宮穂。

【宮穂】
「わたし…とうとう、やりました。
 この島に来た目的を、果たしたんですよ」

【宮穂】
「大好き、です」

【宮穂】
「絶対に、忘れません」

【宮穂】
「だから、あと少しの時間…
 わたしを叱って、わたしをいじめて、
 そして…わたしを、可愛がって、くださいね?」


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目前に迫ったつぐみ荘の廃寮。
その時に生じる別離を宮穂は受け入れようとしている。
そんな宮穂を、航は肯定できない。

【航】
「お前、本当に俺のこと好きなわけ?
 あっさり、いい思い出になるくせに、
 大好きだって、言えるわけ?」


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【航】
「残念ながら…
 俺は、あっさり思い出に成り下がる気はないからな」

【航】
「俺、今なら自信あるからな。
 お前の好きより、俺の好きの方が、強いって」


ひどく未練がましいけど、航がとてもカッコイイ。





12月。
寮に宮穂の姿はない。
文化祭以来、つぐみ寮に姿を見せない。

夕方、電話の後で出かけようとする航。
寮則で「ごはんは揃って食べる」と決まっている。寮則を破るほどの重要な用事なのか、と海己が問う。

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それほど重要な用事ということは、宮穂のこと。
鈍感な海己でもそれは分かる。

航は多分、見つからなかった宮穂の祖父の著作を探し続けているんだ。
文化祭の時点では敗北してしまった賭け、孤独な戦いの延長戦をしているのだ。



サザンフィッシュに顔を出す航。
滝村執事がサザンフィッシュのパフェを持ち帰ったり、駄菓子屋で買い物をしていたりする目撃談を三田村兄妹から聞く。

>宮の奴…
>俗世と縁を絶って、屋敷に引きこもった割りには、
>一度染みついたジャンクフードの味が忘れられないらしい。
>…相変わらず、可愛いな。

航いいなぁ。
切ないなぁ。

サザンフィッシュを出た時、SEで車のエンジン音が入ったけれど、これは多分、滝村執事の運転する高級車だったんだろうなぁ。





生徒会総会。

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本筋と関係ないんですけど、可愛かったので貼っときます。
さて、今回の議題は、前会長であらせられる南栄生の御前のご意向により「六条宮穂のつぐみ寮及び高見塚学園復帰促進について」ということに。

沙衣里が家庭訪問に行っても、寮の仲間が訪ねても、宮穂は引きこもったまま出てこない。まぁ、引きこもった原因が行かないことには無理ですよねぇ。

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宮穂を迎えに行け、と皆から言われるものの、航は行こうとしない。もう少し待ってと言い続けて一ヶ月。航はクリスマスまでに、と孤独な戦いの延長戦への勝利を誓う。




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クリスマスイブ。
今日も苦しい言い訳で面会謝絶を告げる滝村執事。
どんな病気で寝込んでいるのかを聞かれ、返事に窮する。

【奈緒子】
「なんちゃら患い…ってやつでしょ。
 そりゃ、伝染られたら色んな意味で困るだろうね~」

意味深に笑う奈緒子。
いやまぁ、それは伝染るというより、割と皆、既に感染してるんですけどね。
「クリスマスパーティのご馳走」の大荷物を屋敷の中に運び込む面々。

宮穂の「お、美味しい………寂しい………っ」が現状を要約してるなぁ。
寂しさを噛み締めながら、宮穂は海己が作ったご馳走を食べる。

【宮穂】
「あの人に…叱られたい。いじめられたいっ。
 どんくさいどんくさいって、すっごく優しい目で、
 こつんって、やられたいです…っ」

【宮穂】
「先輩…先輩…っ、
 ご、ごめんなさい、ごめんなさぁい…
 わたし、だって、わたしぃっ…」

窓に当たる石の音。
当然、そこには航がいた。

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宮穂は航に会いたかったはずだけれど、顔を見て、改めて、終わってしまったのだということを確認して、航を拒絶する。

【航】
「嫌だ、嫌だ、絶対に嫌だ!
 次の約束がない限り、お前と離れてなんかやるもんか!」

【宮穂】
「ちっとも迎えに来なかったくせに!
 二月もわたしを放っておいたくせにぃっ!」


なんで二ヶ月も顔を見せなかったか。
航が、一人で延長戦をしていたことを打ち明ける。
まだ全部揃っていないから、少し決まりは悪いけれど、それくらい卑怯な手を使っても、宮穂を放したくなかったのだということは宮穂伝わる。

【航】
「お前の尊敬するじいちゃんは…やったぞ?
 お前と同じ境遇のばあちゃんを、
 自分のものにしてみせたぞ…?」


でも、航はエルガーのようにはなれない。
将来、宮穂の隣にいる人は、優しい人なのだと宮穂は言う。どんくさいと罵ったり、いじめたり、ましてや蹴ったりなんかしない。乱暴に好きだとささやいてくれないし、思いきり抱きしめたりしてくれない。

そんな優しい人に抱かれながら、航のことを思い出すのだ。
そう宮穂は言う。

【宮穂】
「ほうら…ざまぁみろですよ…っ!」


勝利宣言のはずなのに勝ち誇れない宮穂。
ずっと航に縛られ続けると、宮穂は宣言してしまった。

【航】
「お前…俺のこと好きだろ?」


この辺、パルフェのラストで里伽子を口説き落とすところに似てるかもしれない。自分が相手を愛していることを伝え、相手が自分を愛しているということを突きつける。



ついに負ける宮穂。
そして、二人は皆が待っているつぐみ寮へ・・・

【???】
「お嬢様を…どこへ連れていくおつもりで?」


というところで、滝村執事が立ちはだかる。
航には、滝村の態度の変化が理解できている。
宮穂の思い出になるだけの人間から、将来へ影響を及ぼす人間に航の立場が変わったから。

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【航】
「滝村さん…
 ようやく俺は、認めてくれたんですね?」

【執事】
「ええ…
 あなたは、お嬢様に近づく、不逞の輩となりました」

【航】
「光栄です…」

【執事】
「今日のところは…見逃します。
 …まだ、“夏休み”ですから」


島の小僧が六条家の脅威として滝村に認識されるのだから、それは光栄と言う他ないですよね。ここの二人の遣り取り、かっこよくてしびれた。

その後はクリスマスパーティだったわけですが、寮の他の面々が都合良く宮穂と航だけ早抜けさせてやったのが、笑えるというか、気が利き過ぎというか。

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珍しく、男側が描かれてるシーン。
丸戸史明シナリオのゲームは、割と男も顔を出しますよね。「ままらぶ」と「ダメ恋」は殆ど出てたような。

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大晦日。
海己と宮のおせち作りを楽しそうに眺める宮穂。
そういえば、宮穂が初めてつぐみ寮を訪ねた時、航と二人で食べたのがおせちの残り物だった。

一方の航は、今は使われていない旧男子寮の大掃除。
探し求めていた最後の1ピース、宮穂の祖父が作った校内新聞22号が発見される。
それを最も喜んだのは、賭けに勝った航ではなく、賭けに負けた宮穂。

【航】
「こら人の話を聞け生涯奴隷!
 お前は、来年から身も心も俺のものなんだぞ?
 わかってんのかよ!?」


泣き笑いが止まらない宮穂。
響く除夜の鐘。

【宮穂】
「今年も…いいえ、ずっとずっと…永遠に、よろしくお願いしますっ」






エピローグ
五年ぶりに開かれる、六条邸の宮穂の部屋。
部屋の窓から宮穂が島の、五年経ってもちっとも変わらない景色を見下ろす。

【執事】
「当初からのお約束の通り、滞在期間は三日間ですからね」


今回の滞在も、宮穂の両親が特例で認めたことだと滝村は言う。五年前も半年間のはずが、その倍いてしまったということも付け加える。

【執事】
「わたくしも、あの時は甘かったと反省しています。
 お嬢様のこの島での生活が、美しい思い出になるのならと、
 つい仏心を出したのがいけなかった…」


滝村が呆れ顔で語る、星野航の五年間の武勇伝。
宮穂の部屋から見えるアパートに住み、何度追い払っても屋敷に通い、使用人を調略し、滝村の目を盗んで入り込み…。

今では、宮穂の両親さえ負けてしまい、最後の砦が滝村本人。
彼としては、航を近づけてしまった負い目もあったのかもしれない。
航も航で、滝村に敬意を払っていたというのが、何とも憎いねぇ。

【航】
「5年もかけやがって…
 俺は『次の夏休み』って、言ったよなぁ?」

【航】
「で、そのお嬢様は、
 自分とこの新入社員と、この島の新任教師と、
 どっちのモノになる?」


出水川重工の内定と教員免許を取り、宮穂を待っていた航。
星野航は筋を通す男だ。

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と、いうわけで、宮穂ルートでした。
身分違いのお嬢様と結ばれる話、というと、どうしても障害を跳ね除ける話を書きたくなってしまいますが、そこは丸戸史明。二人の気持ちが通じ合うまでが大事なんだ、ということでシナリオを作ってきました。

ただ、22号が発見された辺りはちょっと弱いですよね。大事なのは、宮穂が屋敷から出てくるところなわけで。あそこで全部揃ってる状態だと安易かなとは思うものの、盛り上がり的にはそっちの方が良かったのかも。

宮穂は良いキャラクターでした。



今日はここまで!!

戯画「この青空に約束を―」 六条宮穂(1)

さて、ご無沙汰しております。
「この青空に約束を―」を進めるのも久々ですね。
ちょっと時間がなかったものでして。

さて、宮穂ルートです。
今回は宮穂と航がくっつくまで。





六条宮穂
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出水川重工創業者の一族。高見塚学園の理事長の孫で、理事長代理とつぐみ寮の大家を務める。生粋のお嬢様だが、ゲーム開始時点から半年ほど前に航と出会って以来、徐々に独特のキャラクターを開花させた。

六条御息所とは、関係ないっぽい。プライドが邪魔して素直になれないとか、ってのは、どっちかっていうと浅倉奈緒子だもんな。
ま、それは良いとして。





新学期、長く続いた不登校から脱して高校に進学した静が心配で、航は1年の教室を覗き見る。周囲からの注目を集めていることに気付かない航に、宮穂が声をかける。

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【航】
「挙動不審とは何だ挙動不審とは…
 俺は畏れ多くも天下の副会長。ちなみに来年以降も
 『さきの副会長』と名乗り、影の影響力を…」

【宮穂】
「はいはい、
 副会長の御前であらせられることは理解しました。
 理解しましたからとりあえず向こう行きましょうね」


おっとりしてるんですけど、意外と強キャラなところもあったりするんですよね。結構、洞察力も鋭かったりして。
静は大丈夫だから、と自信を持って請け合う宮穂。航はその言葉を信じてみることに。実際、クラスは静に良い意味で興味津々の様子だし。





学校からの帰り道。
黒塗りの車が止まったかと思うと、後部座席から声がかけられる。宮のお嬢様ぶりを改めて感じた航。気後れして車に乗れないでいると、この一言。

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お嬢様なんだか、どうなんだか。。。航が「朱に交わって黒くなりかけている」というのも何だか頷けますね。奈緒子とかの影響ですか。




家事について海己に頼りっぱなしの状況を危惧した宮穂と静。若干危なげながらも夕飯を作っている。で、本来のつぐみ寮のシェフはどこかと言いますと、、、
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おい、こらwww
ま、海己は心配性なんで、それくらいしないと二人だけで頑張るなんてことは出来ないってのは分かりますけどね。
出来た料理は結構ちゃんとしていて、皆を驚かせる。ただ、話を聞くと何だか怪しい点がちらほら。

・麻婆豆腐
【宮穂】
「それ、お豆腐の水切ったのわたしなんですよ」


・バンバンジー
【宮穂】
「ですよね?それはわたしが作ろうって決めたんですよ」

・味噌汁
【宮穂】
「ダシの煮干し探すのに苦労しましたよぉ」


・焼き魚
【宮穂】
「チルド室でそのお魚を見つけたときに、
 わたしの中で勝負は決まりましたね」


結論から言うと、材料を切ったのも、火を通したのも、味付けをしたのも、盛り付けをしたのも静ということが判明しまして、宮穂は「口先き女」という名誉ある称号を授与されることになりましたとさ。





学校の側溝から落ち葉を掻き出す作業を英語教師の建部から言いつけられた航。誰かに手伝わせようと考えていたところ、鈍臭い宮が捕まってしまう。
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建部がやってきて、宮に手伝わせていたことを咎めるが、結局は航と宮とで作業をやり遂げる。

【宮穂】
「…嫌々やるのがいいんじゃないですか」

【宮穂】
「『先輩』に『命令』される理不尽さ…
 これこそが学園生活の醍醐味かなぁって」


このセリフにはなるほどなぁ、って思わされます。
進んでやりたいことじゃないけれど、仕方なくやるのは悪くないって物事は世の中に一定あるわけで。「自分から進んでやる」こと至上主義みたいな考え方もありますが、宮の言うのは一つの真理じゃないかと。



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屋根の補修をしている宮。圧倒的な不器用さを誇る彼女の手付きはどうにも危うい。釘とか曲がりまくってるし。航に声をかけられて気が散ったせいで、宮穂は指を打ってしまう。
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鈍臭いと言われることに抗議するものの、実際鈍臭い宮穂。で、どうして一応は深窓の令嬢たる彼女が屋根の補修をしていたかと申しますと、彼女がつぐみ寮の大家だからでして。

【航】
「大家と言えばぁっ!?」

【宮穂】
「店子も同然っ!?」


違う!違う!!
大家といえば親も同然。店子と言えば子も同然。落語の世界ですね。そうなると、こんにゃくよりもダメ恋っぽいけど。

【宮穂】
「これだけ頑丈に補強しておけば、
 まだまだ10年はもちますね」


宮穂は認めない。今年限りでつぐみ寮がなくなってしまうなんてことは。だから、今は人が住んでいない部分まで補修をするのだ。その気持ちを、航も汲む。

【航】
「重要文化財に指定されるまでは、な」


ちょっと良い話だったんですが、気を利かせすぎた(?)奈緒子が梯子を外したせいで、降りられなくなる二人。奈緒子の考えることは分からないなぁ。





マラソン大会辺りでは、そんなに目立たない宮穂ですが、寮生会緊急総会(?)の時に「先輩は名誉の無駄死だったんだから」と言っていたのが大変良かった。
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緊急総会と言う名の飲み会の後。
匂いだけですっかり酔った様子の宮穂が航の前に現れる。

【宮穂】
「酔ってるんでしょうか?わたし…
 だからこうして、先輩のお隣に図々しく座って、
 それでもって、ドキドキしてるんでしょうか?」


航は宮穂から、マラソン大会の顛末を聞き出す。疲れ切って、骨折して、航が寝ている間にマラソン大会はつつがなく終了したらしい。主に、奈緒子の陰謀によって。それに手を貸してる宮穂と沙衣里。

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六条家の一員としての立場もあるし、つぐみ寮に来て間もないのだから、あまり無茶をするなという航の優しげな言葉に腹を立てる宮穂。つぐみ寮と関わっている時間は長くはないけれど、彼女とて思いは一緒なのだ。
で、急に、自分は好き嫌いがあるという話を始める宮穂。

【宮穂】
「具体的に言うとですね…
 酢の物とか、小魚とか、お豆とか…
 あ、あと、練り物と、海藻類が苦手で」


酢の物、小魚、豆、練り物、海藻類。
おせち料理?

【宮穂】
「でも…でもでもでもですね…っ、
 今まで食べた中で一番のご馳走には、
 それが全部、入ってたんですよぉ」


【宮穂】
「また…食べたい。
 もう一度…ここで年を越したい。
 そう思っちゃ、いけないんですかぁ!?」



回想。半年ほど前。
宮穂の祖父六条紀一郎が亡くなった直後のこと。相続やら何やらの関係で、つぐみ寮がなくなることを伝えにきた宮穂。なるほどねぇ、それが二人の初対面だったのか。
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【航】
「つぐみ寮へようこそ。
 本気で何もないけど、大歓迎するから許せ」


海己手製のおせち(の残り物)を振る舞い、祖父である紀一郎の思い出話を聞かせようという航。質素だけれど、彼なりの、つぐみ寮なりの大歓迎。それが、宮穂にとっては随分と良かったようで。
この項の「あの素晴らしいおせちをもう一度」ってのが良いねぇ。





季節は夏になりまして。
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航の右手も治り、停学も明けまして、一ヶ月ぶりの登校ということになります。凛奈との仲が随分深まって、海己の気持ちが微妙なことになっているけれど、取り敢えずは平穏なつぐみ寮。




しかし、知らないうちに期末テストまで一週間しかないという現実。寮生会は総動員で航の成績底上げを図ることに。権謀術数を尽くして絶対に1位を譲らなかった奈緒子さえ、今回はトップを諦めても良いとの言葉。
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あの奈緒子が!?という顔をして怒られる航。
口に出して怒られる宮穂。





航の教室に来て「先輩をお願いします」とお願いする宮穂。当然のごとく伝わらないが、宮穂には何故伝わらないのか分からない。
で、取次をしたクラスメイトの一言

「でさぁ…あのコ、星野くんとつきあってんの?」

海己と凛奈が二人で勢い良く全否定。ニヤニヤする。
宮穂が航を「先輩」と呼ぶのは、二人が初対面の時、航が自己紹介しないままに随分と長いこと過ごしたから。具体的には、おせちの残り物を振る舞い、酒を勧め、正月番組をダラダラと見て、こたつで二人して昼寝。
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自分についての考察について、自分で要約する宮穂。
しかし、話している内容の重大さに反して、どうも雰囲気がない。



宮穂関連のイベントではないが、凛奈と静の風呂イベントの宮穂が良かったので、引用。
静を苦手にしている凛奈を、一緒に風呂に入らせることにしたつぐみ寮首脳陣。凛奈の背中を押したものの、心配な航は風呂の様子を窺おうと・・・というところで宮穂に捕まる。
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お嬢様の不穏当な発言。
しかし、宮穂は凛奈と静の緊張関係が第一印象の悪さからというより、その後の航を巡るアレコレであるということを把握してるんだな。やはり、洞察力が鋭い。




やってきた夏休み。
早速海にやってくるつぐみ寮の面々。ビーチバレーに興じるものの、運動神経に差がありすぎるチーム構成になった結果、鈍臭いチームはこんな状況に。
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漂う瘴気。
ちなみに、この二人は泳ぐことも出来ないらしい。




夏祭り。
航と一緒に縁日を見て回る茜に、テキ屋のおじさんが南栄生島名物の「合わせ石」について解説しようとした瞬間、お株を奪って話始める宮穂。
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ちなみに、この伝説を調べたのも宮穂の祖父紀一郎なんだとか。何者なんだ、紀一郎。で、絶妙なタイミングで出てきた宮穂は、結構前から二人をつけていた模様。

【宮穂】
「ええ、先輩たちがいつ茂みへと姿を消すか…
 おっと違った、お二人の仲睦まじい様子に
 声をかける機会を逸しまして~」


彼女の物言いは本当にとんでもないなww





六条家の執事・運転手の滝村に丁寧かつスマートに拉致された航。笑顔で丁寧だが、滝村は全く事情を話そうとしない。航も執事の鑑と苦笑混じりに賞賛するほかない。

六条家の別荘に連れてこられた航。庭には島のお偉いさんが集まっている。それを横目に年季が入った立派な部屋に通されると、ドレス姿の宮穂が待っていた。
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「先輩に、格の違いを見せつけてあげようかと」とか「高嶺の花っぽく振る舞ってみた」とか、そういう一通りの下らない遣り取りをしている中で、航がこの騒ぎの理由に気づく。
寮では着々と宮穂の誕生日会の準備が進むが、当の本人は屋敷で執り行われる誕生パーティのために欠席の模様。仕事の都合で急に父親が来たから、だとか。

まぁ、忙しい親御さんが誕生日だけは絶対宮穂の顔を見に来る、というのは悪い話ではない。プレイヤーの側から見ても良い両親だと思えるし、宮穂自身もそう思っている。ただまぁ、友達が祝ってくれる誕生日ってのも、大事ですしねぇ。
あれ?え?てっきり、残念だけど、つぐみ寮の誕生日会は・・・という流れなのかと思いきや、結局抜け出している二人。
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エスコートを要求する宮穂。ちょっと図々しいのが可愛いよね。
それを航も感じている。

みんなが宮穂を祝いたくて、宮穂がみんなに祝われたかった結果、六条家誕生会を早退し、つぐみ寮へという結論に。ちょっと身贔屓が入った結論であることを航が自覚しているのが良い。

ちょっと脇道に逸れるんだけど、血縁者との不和とかを前提にした同世代の若者の家族的な繋がり、みたいなのがこういうゲームではしばしば出てくると思うんだけれど、僕はそういうのはあまり良いと思わないんだよね。

ある程度説得力がある10代を描くには、学校があって、進路のこと考えなきゃいけなくて、家族があってという、面倒臭い一方でありがたい環境がないとダメだと思うんですよ。その辺、丸戸は良いなって思うんです。

あと、誕生パーティそのものを描かないのが良い。その方が味わいがあるってもんです。





宮穂は自由研究で祖父紀一郎について調べている。
50年前にイギリスから南栄生島にやってきて、英語教師として働き、二年後に六条家に婿入り。元の名前はウィリアム・エルガー。六条家に婿入りする以前について記録が残っていないので、その辺が気になっている模様。

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駄菓子屋のおばあさんに「良いコンビ」と言われて頬を染める宮穂。どうも、しばしば航への好意を見せ、口にさえするものの、それがどこまで本気なのか分からない。




自由研究二日目。
取材先について、航は気が進まない模様。それもそのはず、その取材先は航の厳格な祖父であり、島の大物の一人である、星野一誠の家。

【宮穂】
「はい、祖父の生前には大変お世話になりまして…
 このたびはご挨拶が遅れ、大変申し訳ありません」


育ちの良さを感じさせる隙のない立ち振舞に、厳格な一誠もやや同様気味。祖母の奈津江は航がガールフレンドを連れてきたことを喜ぶ。で、航は航で、普段の自分とは違う、祖父祖母の前でのちゃんとした自分を宮穂に見られることが恥ずかしい様子。「航ちゃん」とか呼ばれてるし。


で、どうして星野一誠に取材するかというと、ウィリアム・エルガーが二年間南栄生島で教鞭を執った時の教え子の一人が、この一誠だったから。

一誠が言うには、エルガーが南栄生島に対して抱いていた特別な思いの理由は、妻となる女性と出会ったのがこの島だからではないか、とのこと。エルガーは病気療養で南栄生島を訪れた六条のご息女と出会い、家庭教師を引き受け、恋に落ち・・・というありそうな話。

帰り道、滝村の運転する車で眠ってしまった宮穂。航の肩に頭を預ける形で。どうにも、気持ちを許しまくっているね、このお嬢さんは。

「これは申し訳ございません、星野様」と言いながら、宮穂を援護するべく寮の前を通り過ぎ続ける滝村が笑える。職務忠実ですね、素晴らしい。確か、このシーンが「ダメ恋」でネタになってたよね。




自由研究三日目。
本日は六条屋敷の書庫で紀一郎の著作物を探す。

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相変わらずの宮穂。
ここまでプレイしててやっと気付いたんだけど、宮穂のこういうところは、これまでのまるねこ作品では看板ヒロインが担当してたよね。ショコラの真名井美里とかパルフェの風美由飛とか。お嬢様式天然キャラは面白いけど、メインとしてはちょっとな、というところだったんですが、脇に回ると十二分魅力的ですね。

【宮穂】
「最近、先輩にぐいぐい縮められるせいで、
 上が伸びない変わりに、横に拡がりが…」

【航】
「俺のせいにするなよ…
 どこに肉がついたって?」

【宮穂】
「主に胸の辺りに…」

【航】
「…そこ片付けるからどけ」

【宮穂】
「照れてる!照れてるっ!大発見!」


航としても、宮穂をどう扱ったものか困っている様子。まぁ、そうそう簡単に手を出すわけにもいかないしねぇ。


ともあれ、発見された紀一郎の日記。彼らが求めていた通り、六条家に婿入りする前に書かれたものだった。が、一つ問題が。
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要は、英語で書かれていたということで。
ネイティブの手書きなんか結構英語力あっても読めないですよねー。

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結構、エルガーの赤裸々な恋心が書かれていて、盛り上がる宮穂。
しかしまぁ、読み進めるに連れて、徐々に気持ちがダレてくる。

【宮穂】
「お祖父さま…奥手にも程があります。
 お祖母さまは、明らかにサインを送ってるのに~」


あぁ、なるほど、そうやって、宮穂の祖父祖母と、明け透けに好意を示す宮穂と手を出さない航を対置させるわけか。上手いね。

ただ「彼女がどう思っているのかわからない」と悩み続けるエルガーと、宮穂の好意にはある程度気付いているが踏み出せない航というのは差がある。

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と、自分で言って自分で嫌なことに気付いてしまう宮穂。この理屈で言えば、航が宮穂に手を出さないということは、航は宮穂に好意を抱いていないということになる。途端に萎んでしまう宮穂。

今日は屋敷に泊まるから夕飯は要らない、と宮穂は航を一人で帰らせる。そして、窓から航を見送る。宮穂の豹変が分からない航。




自由研究四日目。
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南栄生島から数百メートル離れた泪島へ。泳げない宮穂はゴムボートを膨らませ、航に曳航を頼む。目的地は、泪島の洞穴。

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宮穂としては、知る人ぞ知る隠れスポットのつもりで航を連れてきたのだが、残念ながら随分昔から島の子供の遊び場にされていた模様。残念。

伝承によると平家の落人が5000両の財宝とともに島に落ち延びた、ってことなんだけど、当時の1両ってのは砂金18gぐらいだったと思うから、90kgで良いのかな?まぁ、どうでも良い話なんですけど。

どうもご機嫌斜めな様子の宮穂。祖父の思い出の場所が島の悪ガキに荒らされていたのが不満だったというわけではない。

【宮穂】
「段取り…最初から狂っちゃいました。
 どう立て直せばいいんですかぁ…」


暫く拗ねていたものの、やっと語り始める宮穂。
宮穂は8月13日、50年前の今日まで日記の翻訳を終えていた。

エルガーは宮子に自分が調べた島の伝承を話して聞かせたが、その中でも宮子が特に気に入ったのが「平家の落人」の話だった。そして8月13日、宮穂の祖父と祖母はこの洞窟にやってきた。

【宮穂】
「ねえ、先輩…
 ここで、クイズです」
「数十年前の、この日、この場所で…」
「お祖父さまが告げた、ある言葉を聞いて…
 お祖母さまは、感激のあまり、泣きだしてしまいました」
「さて、その言葉とは、なんでしょう?」


やはり、天然なようでいて賢いな、このお嬢さん。強制的にそういう空気を作ってしまった。表面上はクイズだが、実質、航に気持ちをはっきりさせることを強いている。
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航がどうしたものか長考に入っている間、宮穂は祖父母が残した落書きを探す。しかし、見つかったのは。。。
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このタイミングで、航と海己の相合い傘を見つけてしまう宮穂の運は最悪である。泣き出す宮穂。宥める航。
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航としては、今の宮穂との関係が居心地が良くて好きなのだけれど、どうも前か後ろか、どちらかに進まなければならない状況になってしまったようで。そんな話を本音で言い合う二人。
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でまぁ、どういう流れか、宮の擦り剥いた膝を舐めてやる航。一頻り舐めてやった後、何をやっているのかと正気に戻る。

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宮穂はすっかりご機嫌で、自分で傷口を舐めて間接キスを味わう。おいおい、ちょっと変態的ですよ。その光景に、ついに航の理性が負ける。


【航】
「その気になったから」

【宮穂】
「わたしを…お求めですか?」

【航】
「欲しい」

【宮穂】
「差し上げます…っ」


この、ちょっと滑稽な遣り取り良いなぁ。実に、この二人らしい。


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と、いうわけで、今日はここまで!

戯画「この青空に約束を―」 桐島沙衣里(3)

さて、沙衣里編も今回で最後。
寮を守ろうとする沙衣里と航ですが、そこでもう一波乱という話。
褒められたものでない二人の関係ですが幸せをつかめるのでしょうか?
と、いうことでいってみましょう。



10月。秋。中間テストの季節。
星野航はめでたく、高見塚学園の生徒会長に当選した模様。

相変わらずつぐみ寮から退寮者は出ておらず、廃寮にもなっていない。
島のために観光リゾート化を食い止めたい、みたいになっている航を沙衣里がたしなめる。
二人がやってきたことは、そんな大袈裟で偉そうなことではなく。
つぐみ寮の小さな平和と仲間を守りたかったから。
ただそれだけ。

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【航】
「なんか…さえちゃん、一皮むけたような気がする」
【沙衣里】
「一膜は破かれたけど…」
【航】
「ぶっ!?
 わ、悪かったなぁ!
 けど、その歳までとっとく方にも責任あるんだからな?」


締まらないけど、これが二人らしくて良い。
たまに、ちゃんとした大人っぽさを見せるのが沙衣里の良いところですね。



平和な日常を破るアナウンス。
学園長に呼び出される航と沙衣里。

紛失していた航の生徒手帳が届けられた。
生徒手帳が見つかったのは島で唯一のラブホテルの部屋。
その時に一緒にいたのは、勿論沙衣里。
危機危機アンド危機。

赤点で退寮にするのは横暴かも知れない。
マラソン大会でルール違反しただけで退寮にするのは横暴かも知れない。
けど、不純異性交遊で退寮にするのは・・・・ありだよなぁ、正直。

【航】
「旅行中の女の子ナンパして、
 ベッドの上でいいことしてましたぁ!」


庇おうとする沙衣里を制して、航が「自白」をする。
そりゃそうだ。沙衣里と一緒にいたなんて言えるはずない。
真実を吐露してしまいそうになる沙衣里を航は必死に抑える。



危機を察した奈緒子。
全員早退の上、寮のリビングに集合と号令。
こうなっては奈緒子が仕切るしかないよなぁ。

寮生にボコボコにされる航。
「何故シラを切らなかったのか」
「何故素直に認めてしまったのか」
そりゃ、その場で罪を認めなかったら相手が沙衣里だったことまで知れるかもしれなかったからで。
とは言っても、二人の仲が秘密である以上、寮の仲間にそれは言えない訳で。

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【奈緒子】
「航…あんた、
 誰を…かばってる?」

流石奈緒子ですよ。鋭いよなぁ。
航がそんな下手を打つのは、それなりの理由があるからであって、この展開では恐らく、一緒にいた人間を庇っていると推測される。そして、航が庇い、寮の仲間に言えないような人間となると、同じ寮に住む人間の誰か、ということになる。

奈緒子が共犯者探しを始める。
「皆目を閉じろ」とまるで一昔、二昔まえの学園ドラマ。
「正直に申し出たら怒らない」と言いながら、結局怒るのがこの手法のパターンですが、今回はまさにそのパターンにはまる。

【奈緒子】
「って………
 よりにもよってお前かぁ~!!!」
「なに考えてんだこのスチャラカ教師~!
 教え子に罪を押しつけやがって~!」


私怨もないとは言えないかもしれないよなぁ。
沙衣里が認める通り、沙衣里に無いもの、そして自分が備えるべきだと思っているものを奈緒子が沢山持っている一方、航に情けなく甘えて頼って依存して、ってのが沙衣里には出来るけど奈緒子には出来ないわけで。

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「しょ、しょうがないじゃん…
 星野と一緒にいると、なんか、すごくいいんだもんっ」
「あ、あんたらだって、あんたらだってさぁ!
 多かれ少なかれ、こいつに恋、してたじゃん!
 だ、だから、おあいこだよぉ!」
「やだやだやだ、一緒がいい!
 星野と離れたくないよぉ…っ」


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沙衣里大暴走。
このダメっぷり、丸戸らしくって良いなぁ。

二人残される沙衣里と航。
航を退寮の危機に追い込んでしまった。
つぐみ寮存続の危機を招いてしまった。
寮の仲間との関係を壊してしまった。

沙衣里の責任は重大だけれど、まずは寮の仲間とやり直すところから始めないと先へは進めない。
だって、彼らに残された時間はもう多くはないのだから。



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「12人の怒れる教師」
アメリカの陪審制度を描いた傑作映画「12人の怒れる男」から。
三谷幸喜の「12人の優しい日本人」などパロディも多数。
で、裁かれるのは勿論、不純異性交遊の容疑がかけられている星野航。
学園の重要事項ということで、理事長を務める六条家から六条宮穂も参加。

劣勢の中でも「星野を更正させる」と熱弁を奮う沙衣里。
「………自分のせいなのにいけしゃあしゃあと」と苦笑気味な宮穂。
しかし、その熱弁に動かされた教師が一人。

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休憩時間。
航の味方をしようとしない宮穂を沙衣里が問い詰める。
しかし、のらりくらりとかわすばかりの宮穂。



三度の停学について。
一度目は上級生との喧嘩、二度目は学園祭での大騒ぎ、三度目はマラソン大会でのルール違反。
マラソン大会の裏で、凛奈と航の間に何があったのかを語る沙衣里に、心を動かされる教職員達。
しかし、今回の件は?

相手は寮生の中の誰かなのでは?という疑惑。
そこから、航は相手の女性を庇っているのではないかと考えに至る。
更に二人が厳罰反対へと回る。

これまでの判例を引く。
停学5回うち傷害事件2回で警察沙汰も経験している卒業生がいた。
その名は三田村隆史。
勿論、彼は退学にはならず無事に学園を卒業している。
ここで採決をして3対9、ついに反対派が多数になる。

表の手段では勝機が見えてきた。
ここで、もう一押し、裏の手段。

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学園長と教頭のところに届けられた生徒会新聞。
紙面を賑わすリゾート計画についての様々な情報。

【奈緒子】
「こんな憶測記事、ダメですよね?
 ………だから出水川経由でウラを取ります」


表の手だけでも、裏の手だけでも、完全勝利は収められない。
星野航が全うに生きていくためには表での勝利は必ず必要だし、つぐみ寮が年度末まで間違いなく存続するためには裏でも勝っておかなければならない。浅倉奈緒子、流石の活躍です。



帰り道、ぬかるんだ道を歩く。
宮穂の足元が危なっかしいと言う沙衣里。
沙衣里の方が余程危なっかしいと宮穂は言う。

【宮穂】
「だって、わたしの方が、
 目が離せないくらい危なっかしかったら、
 先輩はわたしのこと、ほうっておかなかったはずですもん」


宮穂の負け惜しみ。
負け惜しみを言うってことは、沙衣里の勝利を認めたってことなんだよね。
丸戸は負けた女を描くのが上手い。

負けた5人は置き手紙を残してサザンフィッシュに宿泊。
気が回り過ぎるというのもあれだけれど、でもまぁ、良いんじゃないの?



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黒ストです。
油断していたけど、そういえば黒ストです。

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まさかの「あんたなんか」です。
詳細については里伽子スキーとしては見逃せないよね。

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航が卒業するまでの一年半。
明日から一年半は恋人はお預け、という取り決めをする二人。
これからずっといっしょにいるために。




それから、時が流れて5年後の夏。
島に帰ってきた航、生徒のアシストもあって急いで航を迎えに行く沙衣里。
それを苦々しく見送る建部。笑ってる吉倉。

吉倉が聞いてきた噂。
今年で高見塚を定年になる森本。理科の教師がいなくなってしまう高見塚に救世主のような理系学生が現れて…、という話。ヤンキー(ってほどでもないが)母校に帰る、という奴か。

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沙衣里ルート。
ありがちでシンプルなストーリーだからこそ丸戸史明の技が遺憾なく発揮されていたと思います。
優柔不断で依存体質、国語の教師なのに論理性を欠き、年齢相応に大人らしさと子供っぽさが同居している、という沙衣里のダメさはリアリティがあり、この辺りはやはり丸戸の筆力です。
僕はとても楽しめました。

ここまでこのゲームをやってきて気付いたのは、個別のルートの完結性が極めて低いということです。ショコラやパルフェでも、一つの大きな物語のために他のシナリオが存在する、という面は勿論あったんですが、ここまでではなかったように思います。

個人的には、一つのルートは一つの物語としてちゃんと完結していて欲しいので、ゲーム全体としてのカタストロフィを追い求めるあまり、個別の部分が疎かになるのはどうかと思うなぁ、という感想です。
丸戸シナリオの良さは瑣末な部分を甘くしないところだと思うので、その辺をもうちょっと考えてほしいなぁ。

今日はここまで!!