2ntブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

戯画「この青空に約束を―」 桐島沙衣里(3)

さて、沙衣里編も今回で最後。
寮を守ろうとする沙衣里と航ですが、そこでもう一波乱という話。
褒められたものでない二人の関係ですが幸せをつかめるのでしょうか?
と、いうことでいってみましょう。



10月。秋。中間テストの季節。
星野航はめでたく、高見塚学園の生徒会長に当選した模様。

相変わらずつぐみ寮から退寮者は出ておらず、廃寮にもなっていない。
島のために観光リゾート化を食い止めたい、みたいになっている航を沙衣里がたしなめる。
二人がやってきたことは、そんな大袈裟で偉そうなことではなく。
つぐみ寮の小さな平和と仲間を守りたかったから。
ただそれだけ。

saeri34.jpg

【航】
「なんか…さえちゃん、一皮むけたような気がする」
【沙衣里】
「一膜は破かれたけど…」
【航】
「ぶっ!?
 わ、悪かったなぁ!
 けど、その歳までとっとく方にも責任あるんだからな?」


締まらないけど、これが二人らしくて良い。
たまに、ちゃんとした大人っぽさを見せるのが沙衣里の良いところですね。



平和な日常を破るアナウンス。
学園長に呼び出される航と沙衣里。

紛失していた航の生徒手帳が届けられた。
生徒手帳が見つかったのは島で唯一のラブホテルの部屋。
その時に一緒にいたのは、勿論沙衣里。
危機危機アンド危機。

赤点で退寮にするのは横暴かも知れない。
マラソン大会でルール違反しただけで退寮にするのは横暴かも知れない。
けど、不純異性交遊で退寮にするのは・・・・ありだよなぁ、正直。

【航】
「旅行中の女の子ナンパして、
 ベッドの上でいいことしてましたぁ!」


庇おうとする沙衣里を制して、航が「自白」をする。
そりゃそうだ。沙衣里と一緒にいたなんて言えるはずない。
真実を吐露してしまいそうになる沙衣里を航は必死に抑える。



危機を察した奈緒子。
全員早退の上、寮のリビングに集合と号令。
こうなっては奈緒子が仕切るしかないよなぁ。

寮生にボコボコにされる航。
「何故シラを切らなかったのか」
「何故素直に認めてしまったのか」
そりゃ、その場で罪を認めなかったら相手が沙衣里だったことまで知れるかもしれなかったからで。
とは言っても、二人の仲が秘密である以上、寮の仲間にそれは言えない訳で。

saeri35.jpg

【奈緒子】
「航…あんた、
 誰を…かばってる?」

流石奈緒子ですよ。鋭いよなぁ。
航がそんな下手を打つのは、それなりの理由があるからであって、この展開では恐らく、一緒にいた人間を庇っていると推測される。そして、航が庇い、寮の仲間に言えないような人間となると、同じ寮に住む人間の誰か、ということになる。

奈緒子が共犯者探しを始める。
「皆目を閉じろ」とまるで一昔、二昔まえの学園ドラマ。
「正直に申し出たら怒らない」と言いながら、結局怒るのがこの手法のパターンですが、今回はまさにそのパターンにはまる。

【奈緒子】
「って………
 よりにもよってお前かぁ~!!!」
「なに考えてんだこのスチャラカ教師~!
 教え子に罪を押しつけやがって~!」


私怨もないとは言えないかもしれないよなぁ。
沙衣里が認める通り、沙衣里に無いもの、そして自分が備えるべきだと思っているものを奈緒子が沢山持っている一方、航に情けなく甘えて頼って依存して、ってのが沙衣里には出来るけど奈緒子には出来ないわけで。

saeri36.jpg

「しょ、しょうがないじゃん…
 星野と一緒にいると、なんか、すごくいいんだもんっ」
「あ、あんたらだって、あんたらだってさぁ!
 多かれ少なかれ、こいつに恋、してたじゃん!
 だ、だから、おあいこだよぉ!」
「やだやだやだ、一緒がいい!
 星野と離れたくないよぉ…っ」


saeri37.jpg

沙衣里大暴走。
このダメっぷり、丸戸らしくって良いなぁ。

二人残される沙衣里と航。
航を退寮の危機に追い込んでしまった。
つぐみ寮存続の危機を招いてしまった。
寮の仲間との関係を壊してしまった。

沙衣里の責任は重大だけれど、まずは寮の仲間とやり直すところから始めないと先へは進めない。
だって、彼らに残された時間はもう多くはないのだから。



saeri38.jpg

「12人の怒れる教師」
アメリカの陪審制度を描いた傑作映画「12人の怒れる男」から。
三谷幸喜の「12人の優しい日本人」などパロディも多数。
で、裁かれるのは勿論、不純異性交遊の容疑がかけられている星野航。
学園の重要事項ということで、理事長を務める六条家から六条宮穂も参加。

劣勢の中でも「星野を更正させる」と熱弁を奮う沙衣里。
「………自分のせいなのにいけしゃあしゃあと」と苦笑気味な宮穂。
しかし、その熱弁に動かされた教師が一人。

saeri39.jpg

休憩時間。
航の味方をしようとしない宮穂を沙衣里が問い詰める。
しかし、のらりくらりとかわすばかりの宮穂。



三度の停学について。
一度目は上級生との喧嘩、二度目は学園祭での大騒ぎ、三度目はマラソン大会でのルール違反。
マラソン大会の裏で、凛奈と航の間に何があったのかを語る沙衣里に、心を動かされる教職員達。
しかし、今回の件は?

相手は寮生の中の誰かなのでは?という疑惑。
そこから、航は相手の女性を庇っているのではないかと考えに至る。
更に二人が厳罰反対へと回る。

これまでの判例を引く。
停学5回うち傷害事件2回で警察沙汰も経験している卒業生がいた。
その名は三田村隆史。
勿論、彼は退学にはならず無事に学園を卒業している。
ここで採決をして3対9、ついに反対派が多数になる。

表の手段では勝機が見えてきた。
ここで、もう一押し、裏の手段。

saeri40.jpg

学園長と教頭のところに届けられた生徒会新聞。
紙面を賑わすリゾート計画についての様々な情報。

【奈緒子】
「こんな憶測記事、ダメですよね?
 ………だから出水川経由でウラを取ります」


表の手だけでも、裏の手だけでも、完全勝利は収められない。
星野航が全うに生きていくためには表での勝利は必ず必要だし、つぐみ寮が年度末まで間違いなく存続するためには裏でも勝っておかなければならない。浅倉奈緒子、流石の活躍です。



帰り道、ぬかるんだ道を歩く。
宮穂の足元が危なっかしいと言う沙衣里。
沙衣里の方が余程危なっかしいと宮穂は言う。

【宮穂】
「だって、わたしの方が、
 目が離せないくらい危なっかしかったら、
 先輩はわたしのこと、ほうっておかなかったはずですもん」


宮穂の負け惜しみ。
負け惜しみを言うってことは、沙衣里の勝利を認めたってことなんだよね。
丸戸は負けた女を描くのが上手い。

負けた5人は置き手紙を残してサザンフィッシュに宿泊。
気が回り過ぎるというのもあれだけれど、でもまぁ、良いんじゃないの?



saeri41.jpg

黒ストです。
油断していたけど、そういえば黒ストです。

saeri42.jpg

まさかの「あんたなんか」です。
詳細については里伽子スキーとしては見逃せないよね。

saeri43.jpg

航が卒業するまでの一年半。
明日から一年半は恋人はお預け、という取り決めをする二人。
これからずっといっしょにいるために。




それから、時が流れて5年後の夏。
島に帰ってきた航、生徒のアシストもあって急いで航を迎えに行く沙衣里。
それを苦々しく見送る建部。笑ってる吉倉。

吉倉が聞いてきた噂。
今年で高見塚を定年になる森本。理科の教師がいなくなってしまう高見塚に救世主のような理系学生が現れて…、という話。ヤンキー(ってほどでもないが)母校に帰る、という奴か。

saeri44.jpg




沙衣里ルート。
ありがちでシンプルなストーリーだからこそ丸戸史明の技が遺憾なく発揮されていたと思います。
優柔不断で依存体質、国語の教師なのに論理性を欠き、年齢相応に大人らしさと子供っぽさが同居している、という沙衣里のダメさはリアリティがあり、この辺りはやはり丸戸の筆力です。
僕はとても楽しめました。

ここまでこのゲームをやってきて気付いたのは、個別のルートの完結性が極めて低いということです。ショコラやパルフェでも、一つの大きな物語のために他のシナリオが存在する、という面は勿論あったんですが、ここまでではなかったように思います。

個人的には、一つのルートは一つの物語としてちゃんと完結していて欲しいので、ゲーム全体としてのカタストロフィを追い求めるあまり、個別の部分が疎かになるのはどうかと思うなぁ、という感想です。
丸戸シナリオの良さは瑣末な部分を甘くしないところだと思うので、その辺をもうちょっと考えてほしいなぁ。

今日はここまで!!